MSSA菌血症に対するセファゾリンの代替薬には何があるか
【序論】
私の担当患者はXXXMSSA菌血症を起こした。MSSA菌血症に対しての第一選択薬はセファゾリンであるが、現在セファゾリンの供給が止まっている状況である。そこでセファゾリンの代替薬としてどのようなものが使用できるのか調べることにした。
【本論】
厚労省が作成・発表したセファゾリンの代替薬リストでは、アンピシリン・スルバクタム、セフォタキシム、セフトリアキソン、バンコマイシン、ダプトマイシンが挙げられている。
Paulらによる後ろ向きコホート研究では、クロキサシリン(n=281)、セファゾリン(n=72)、その他のβラクタム系薬(n=145)による治療90日後の死亡率について調査が行われた。クロキサシリンを対照とした90日死亡率のORは、セファゾリン0.91(95%CI 0.47~1.77,p=0.781)、その他のβラクタム系薬1.29(95%CI 0.77~2.14,p=0.332)であり、有意差は見られなかった。
Patelらによる後ろ向きコホート試験では、標準治療群(ナフシリンかセファゾリンによる治療)(n=51)とセフトリアキソンによる治療群(n=42)における微生物学的および臨床的転帰を比較した。両者の微生物学的治癒率は94.1%、95.2%(p=0.81)であり、臨床的治癒率は74.5%、83.3%(p=0.30)であった。
Schweizerらによる後ろ向きコホート試験では、ナフシリンもしくはセファゾリン治療を行った群(n=38)とバンコマイシン併用療法を行った群(n=135)、バンコマイシン単独療法を行った群(n=94)を対象に調査を行った。ナフシリンまたはセファゾリンを投与された患者では、バンコマイシン単独群と比較して、死亡率が79%低かった(HR 0.21:0.09-0.47)。経験的にバンコマイシンが初期投与された122人のうち、ナフシリンまたはセファゾリンにスイッチされた群(n=66)はバンコマイシン継続群よりも、死亡率が69%低かった(HR 0.31:0.10-0.95)。
【結論】
これらの研究から、セファゾリンを除くβラクタム系薬は治療効果の面でセファゾリンに劣らないと推測できる。また、バンコマイシンを使用するメリットはセファゾリンを使用する場合と比べて少ないと考えられる。ただし、これらの研究はいずれも後ろ向きコホート研究であり、十分なエビデンスではない。また、βラクタム系薬の細かい種類におけるデータがそろっていない。よって、これらのデータのみでセファゾリンを除くβラクタム系薬、バンコマイシンをセファゾリンの代替薬として使用可能か否かの判断はできず、厚労省が発表した代替薬についての妥当性を示すことはできなかった。
【参考文献】
・https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000498133.pdf
・Paul M,et al. Are all beta-lactams similarly effective in the treatment of methicillin-sensitive Staphylococcus aureus bacteraemia? Clin Microbiol Infect. 2011 Oct;17(10):1581-6. doi: 10.1111/j.1469-0691.2010.03425.x. Epub 2010 Dec 14.
・Ursula C,et al.Outcomes of ceftriaxone use compared to standard of therapy in methicillin susceptible staphylococcal aureus (MSSA) bloodstream infections. Int J Clin Pharm. 2014 Dec;36(6):1282-9. doi: 10.1007/s11096-014-9999-5. Epub 2014 Sep 4.
・Schweizer M,et al. Comparative effectiveness of nafcillin or cefazolin versus vancomycin in methicillin-susceptible Staphylococcus aureus bacteremia. BMC Infect Dis. 2011 Oct 19;11:279. doi: 10.1186/1471-2334-11-279.
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