CQ:敗血症性ショックの患者に対して、ステロイドを使用することは使用しないことと比べて患者の死を回避できるかどうか
序論:敗血症性ショックの患者に対するステロイドの使用について、これまでの二次資料(ハリソン内科学第5版)を用いた学習では重症敗血症性ショックの患者に対してステロイドを使用することがあるという認識に留まっており、実際に敗血症性ショックの患者を前にしてステロイドを使用するかどうかを1次資料を参考にして判断したいと考えた。
本論:論文の研究デザイン:Randomized Controlled Trial 以下に論文のPICOを示す。
P(Patient): 24時間以内に敗血症性ショックと診断又は、疑われ、6時間以上2つ以上の臓器でSOFAスコアが3点又は4点で、血圧90/65を維持する為にノルエピネフリンなどの昇圧薬を>0.25μg/kg/min又は>1mg/hで投与されたICU入室中の患者が
I(Intervention): 7日間、ヒドロコルチゾンを6時間毎に50mg静脈内ボーラス投与され、フルドロコルチゾンを朝に一回経鼻胃管を通して50μgの錠剤として投与されることは
C(Comparison):プラセボを投与されることと比べて
O(Outcome):90日間の全死因死亡率が低下するかどうか(primary outcome)
ランダム割付されていたが、隠蔽化については不明である。(concealmentで検索したが該当なし)群間の差として、ウイルス感染が治療群に多いという病原体の分布についての記載がDiscussionにあったが、Supplementary Appendixによればその差は20名であり、全体の結果を覆す可能性を残している。交絡因子についてはよく検討されていた。ITT解析されており、結果に影響を及ぼすような脱落もなかった。(追跡率99%)患者と介入者に対する二重盲検化がされている。症例数は十分でサンプルサイズは計算され、primary outcomeに有意差は出ている。以下に90日間全死因死亡率の結果を示す。発生率はPlacebo(N=627)で308(49.1%)介入群(N=614)で264(43.0)、Relative Risk (95% CI)は0.88(0.78-0.99)P=0.03。RRR=12.4%,NNT=16.4%,ARR=6.1%,NNT=16.7。Secondary outcomeは、昇圧薬からの離脱及び臓器不全からの回復を1~2日有意に早めたが、人工呼吸器からの離脱に関しては有意差が出ていない。有害事象については、治療群において高血糖のリスクが有意に高く、胃十二指腸出血と重複感染のリスクに有意差は認められなかった。
結論(患者への適用):患者は敗血症性ショックで輸液及び昇圧薬に対する反応が悪い状態であった。また懸念される高血糖については糖尿病などの危険因子は持ちわせていない。90日間で死亡率を6%下げ、ショックからの離脱も1~2日早い。NNTによれば17人治療して1人効果が現れる事になる。一方で血糖管理や新たなルート確保などの治療の複雑さは問題となる可能性があるが、以上より発症より24時間以内にステロイドを使用することは目の前の患者の死を回避するのに役に立つと考える。以下にReferenceを記載する。
1. ハリソン内科学第5版
2. Annane D, Renault A, Brun-Buisson C, Megarbane B, Quenot JP, …Bellissant E
Hydrocortisone plus Fludrocortisone for Adults with Septic Shock. N Engl J Med. 2018 Mar
寸評 時間がない中、PICOは適切だし分析も妥当でした。問題は、これほどの難問が未だに存在しているという意味。p値の意味も学べました。メタ認知って大事ですね。
コメント
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