注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
「非感染性椎間板炎にはどのようなものがあるか、その頻度はどれくらいか」
椎体・椎間板炎(vertebral osteomyelitis/discitis、2.4人/10万人)1には一般的に感染性が多く、感染性椎間板炎の内訳はStaphylococcus aureus が50%以上、その他E.coliや Candida spp、Pseudomonas aeruginosa、 groups B and G streptococci、Brucella spp、Mycobacterium tuberculosisが原因菌となる。2一方で非感染性にはどのような鑑別が挙げられ、またその頻度はいかほどであるのか調べた。
UpToDateにて非感染性の椎体・椎間板炎について調べたところ、椎体・椎間板炎の鑑別(感染性を含む)として、脊髄硬膜外膿瘍、腰筋膿瘍、脊髄変性疾患、椎間板ヘルニア、転移性腫瘍、脊椎圧迫骨折2、脊椎関節炎(強直脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎など)3が挙げられたが、これらは腰背部痛をきたす脊椎疾患の鑑別であり、厳密には椎体・椎間板炎とは異なり、今回の疑問の答えとはならなかった。
次に椎体・椎間板に炎症を起こすような疾患として画像的に該当するものが無いか検討した。椎体・椎間板炎とMRIで画像所見が類似し鑑別を要する疾患として変形性脊椎症がModic Type1変性を起こす場合、外傷性にシュモール結節が生じる場合、ASの既往がある患者の圧迫骨折があったが、これらは脊椎や周囲の筋肉への炎症の波及パターンなどから鑑別できるとされ、いずれも骨髄の浮腫を見ているものの、病態としては椎体・椎間板炎では無い。4
最終的にまとまった報告はなく、case reportレベルであるが、非感染性椎間板炎として、慢性関節リウマチが腰椎椎間板炎・椎体炎を起こすcase(1989年と1991年の2例のcase report、rheumatoid pannusを強く示唆する病理所見と抗生剤への不応から診断された)5と慢性再発性多発性骨髄炎(有病率:1人/100万人以下)が椎体に起こすcaseが確認できた。6
非感染性の椎体・椎間板炎の原因としては関節リウマチと慢性再発性多発性骨髄炎があるが、いずれも症例報告レベルであり頻度としては非常に稀である。
- Werner Zimmerli,M.D.et al.Vertebral Osteomyelitis. N Engl J Med 2010;362:1022-9
- Malcom McDonald,PhD,FRACP,FRCPA.UpToDate. https://www.uptodate.com/contents/vertebral-osteomyelitis-and-discitis-in-adults。access:2018/05/17
- David T Yu,MD. Et al.UpToDate;Overview of the clinical manifestations and classification of spondyloarthritis. access:2018/05/17
4)Yogesh Kumar,Nishant Gupta,Avneesh Chhabra,et al.Magnetic resonance imaging of bacterial and tuberculous spondylodiscitis with associated complications and non-infectious spinal pathology mimicking infections: a pictorial reviewPMID:28583099
5)Masahide Nitta et al.Two cases of Rheumatoid Spondylitis in the Lumbar Spine.日関外誌,Ⅶ,203-210,1993.
6)Costa-Reis P, Sullivan KE. 2013 Aug;33(6):1043-56. doi: 10.1007/s10875-013-9902-5. Epub 2013 May 22. PMID:23695372
寸評:問題設定により添えなかったですね。実習でやったようにハリソンを読めばすぐに答えが出ました。ハリソン、偉大です。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。