注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
口腔ケアは膿胸のリスクを減らすのか?
私が担当した患者は(患者情報あるため割愛)と思い調べた。
参考にした文献[1]は呼吸器疾患をもつ3059人を対象に高齢者入院患者における重度歯周病の発症と呼吸器疾患との関連を調べている。歯周病を持つ患者は772人/3059人(25.2%)いた。年齢, 性別, 入院日数, 死亡, 社会的ステータスに基づいて比較した。
結果、膿胸と関わる疾患については、肺炎(RR:2.6; 95%CI:2.2-5.7; p <0.0001)、胸膜膿瘍 (RR = 2.6; p < 0.0001)、肺膿瘍(RR:2.6; 95%CI:1.6-7.8; p = 0.002)において歯周病と高い関連性をもつと分かった。胸膜炎(RR:1.9;95%CI:1.1-3.3; p < 0.0001)も歯周病と関連性があった。
胸膜膿瘍、肺膿瘍が破れて膿胸に進むこともあり、また胸膜炎も膿胸を引き起こす。よって歯周病予防は膿胸のリスクを減らすといえるが、膿胸の患者とそうでない患者での歯周病有病率を調べた文献が見つからなかったのでリスクの具体的数値はわからなかった。
1983年以降の本邦での歯周病に関連した膿胸の報告例は6例あった[2]。さらに2013年糖尿病や免疫不全などの基礎疾患を有さない患者で歯周病が原因の膿胸,前縦隔膿瘍が1例報告されている2。
結論として、基礎疾患や免疫抑制、肺の術後、肺疾患といった膿胸の高リスク患者でなくても、口腔環境が悪い患者だと判明した際に、膿胸も鑑別に入れるべきである。そして肺炎や膿胸の予防には口腔ケアが重要であると考える。
[1] [Prevalence of severe periodontal disease and its association with respiratory disease in hospitalized adult patients in a tertiary care center]. Fernández-Plata R, et al. Gac Med Mex. 2015 Sep-Oct.
[2] 日本呼吸器学会誌27巻1号(2013年1月)歯周病に起因した膿胸,前縦隔膿瘍の1手術例 渡辺 梨砂,西岡 清訓,日向 聖,岩澤 卓
寸評;文章は上手いですが、「小説」っぽくなっています。序論本論結論の流れを考えてクリスピーな文章にしましょう。あとは論理の抱合関係も学びましょう。
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