注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
2016年7月15日より、レポート提出のルールを変えています。学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。
また、未完成者が完成者より得をするモラルハザードを防ぐために、完成原稿に問題があってもあえて修正・再提出を求めていません。レポート内には構造的に間違いが散在します。学生のレポートの質はこれまでよりもずっと落ちています。そのため、岩田が問題点に言及した「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
結石性腎盂腎炎の治療には、URSとESWLのどちらが優れているのか
上部尿路結石による尿路閉塞を伴う結石性腎盂腎炎の際には、緊急ドレナージと排石が重要である。欧州泌尿器学会の尿路結石ガイドライン1)によると、結石性腎盂腎炎では尿管ステントもしくは腎瘻によるドレナージ後、排石することが推奨される。しかし最適な排石方法は未だ確立されていない。今回は経尿道的腎尿管砕石術(URS)と体外衝撃波砕石術(ESWL)とのどちらの治療法が優れているのかについて調べることにした。
Kanno Tら2)は医仁会武田総合病院にて結石性腎盂腎炎に対してドレナージ後URS(48人)もしくはESWL(40人)を施行された88人の患者について、2004年4月から2011年9月までの治療経過の後ろ向き研究を行った。ICUでの管理が必要な重症例はURS群15%、ESWL群25%(p=0.34)、尿管ステント留置に成功した症例はURS群96%、ESWL群93%であり、残りは腎瘻が造設された(p=0.83)。
結果は以下のようであった。治療経過としてドレナージから治療開始に至るまでの時間はURS群13.4日、ESWL群8.6日(p=0.006)、完全排石率はURS群98%、ESWL群67.5%(p<0.001)、再治療が必要となった例はURS群0%、ESWL群90%(p<0.001)、補助治療が必要となった例はURS群2%、ESWL群33%(p=0.002)、合併症の発生率は同程度であった(p=0.85)。さらに腎盂腎炎をコントロールした後にURSを行うと、完全に石が除去され、合併症の発生率も抑えられるので、これが安全で適切な方法であることが分かった。
結石性腎盂腎炎の治療における論文は上記の1つしか見つけることができなかったが、尿管結石治療におけるURSとESWLを比較した論文は多く見つかった。例えばSarica Kら3)による片側性尿管閉塞で急性腹痛を生じた80人の患者に対するランダム化比較試験では、期間中、ESWL群はURS群に比べて鎮痛剤をかなり多く必要としたことが分かった(p=0.001)。URS群では腎疝痛発作や病態が急変した患者も少なく、HRQOLスコア(健康関連QOLのこと。移動の程度、身の回りの管理、普段の生活、痛み・不快感、不安・ふさぎ込みの5項目からなり数値が高いほど健康状態が良いことを示す)も高かった(p=0.004)。Xu Yら4)が行ったCochrane library, Medline, Springer, Elsevier Science Direct, PubMedといった13のデータベースのランダム化比較試験と前向き研究によるメタ解析によると、URS群はESWL群に比べて患者満足度が高かった(p=0.02)。これらはURSとESWLの治療疼痛の程度や治療後のQOLという点で今回の議題に反映できるだろう。
以上より結石性腎盂腎炎の治療には、完全排石率が高いこと、再治療や補助治療がほとんど不要であること、疼痛の程度が低いこと、患者のQOLや満足度が高いことからURSの方がESWLよりも優れていると言える。
参考文献
1) Turk C et al. Guidelines on Urolithiasis. European Association of Urology 2015
2) Kanno T et al. Safety and efficacy of ureteroscopy after obstructive pyelonephritis treatment.
Int J Urol. 2013 Sep;20(9):917-22. doi: 10.1111/iju.12060. Epub 2013 Jan 24.
3) Sarica K et al. Emergency management of ureteral stones: Evaluation of two different approaches with an emphasis on patients' life quality. Arch Ital Urol Androl. 2016 Oct 5;88(3):201-205.
4) Yahong Xu et al. A meta-analysis of the efficacy of ureteroscopic lithotripsy and extracorporeal shock wave lithotripsy on ureteral calculi. Acta Cir Bras. 2014 May;29(5):346-52.
寸評:医学の世界でははっきりした答えがでないことが多いのですが、これはわりとすんなりでましたね。ESWL、そういえば最近みないな。いろんな方面から議論しているのが良いいと思います。
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