注意！ これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
２０１６年７月１５日より、レポート提出のルールを変えています。学生に与えられたレポート作成時間は総計５時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、５時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。
また、未完成者が完成者より得をするモラルハザードを防ぐために、完成原稿に問題があってもあえて修正・再提出を求めていません。レポート内には構造的に間違いが散在します。学生のレポートの質はこれまでよりもずっと落ちています。そのため、岩田が問題点に言及した「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
肝梗塞と肝膿瘍をCT所見で鑑別する際にどこに注目すればよいか？
肝梗塞はそれ自体では症状は引き起こさず、画像所見でのみ検出される場合が多い一方で、心窩部痛または右上腹部の痛み、黄疸、吐き気、および嘔吐などの特徴を有することや、発熱をきたすこともある。一方肝膿瘍は90％の患者で発熱、50～75％の患者で腹部症状、50％の患者で肝腫瘤や黄疸といった症状を呈する。このように肝梗塞と肝膿瘍は症状や身体所見が似ていることがあるが、抗菌薬投与やドレナージなど、その後の治療が異なるので、これらを鑑別するためにどのようなCT所見に注目すればよいのかについて調べた。
肝梗塞は、単純CTでは低吸収領域として写り、造影CTにおいても造影効果を呈さない。同定された55個の病変のうち53個は3つの形に分類でき、楔形が18個（34％）、円形または楕円形が26個（49％）、胆管と並行する不規則な形状の低吸収領域が9個（2％）であった。楔形病変は全て肝臓の周辺に位置しており、そのうち4個は円形の病変に変化した。
一方肝膿瘍は、単純CTでは膿瘍腔は不均一な低吸収域として描出され、造影CTでは膿瘍腔は造影されない。膿瘍周囲肝実質の炎症、浮腫層が比較的よく造影され、造影されない膿瘍腔との境界が明瞭となる。24の病変のうち、19例（79％）の病変は円形または半円形であり、22例（92％）は滑らかではっきりした縁を有していた。ダイナミックCTの動脈相では、18例（75％）で一時的な局所の濃染所見が見られた。門脈相では22例（92％）が膿瘍壁の増強効果が認められ、そのうち13例（54.2％）は一重または二重構造を示した。また、 18例（75％）で膿瘍内の隔壁がハチの巣状あるいは格子状に染まった。わずか2例（8.3％）がガスの所見を呈していた。
結論としては、肝梗塞と肝膿瘍をCT画像で直接比較する論文が見つからなかったため、テーマに対する明確な答えは得られなかった。肝膿瘍は内部に液性の膿瘍腔を伴う場合には、膿瘍腔周囲の二重構造や局所の濃染所見が得られれば多くの症例で診断可能であるが、このような所見がない場合、肝梗塞と鑑別するのは難しく、時間を追っての症状の変化や抗菌薬投与に対する反応なども考慮して鑑別していくべきではないかと考える。
〈参考文献〉
著者/タイトル/雑誌名/年・巻・ページ
・Cheng-Lin Wang, Xue-Jun Guo, Shui-Bo Qiu, Yi Lei, Zhi-Dong Yuan, Han-Bin Dong and Hui-An Liu/ Diagnosis of bacterial hepatic abscess by CT/ Hepatobiliary Pancreat Dis Int/ 2007/ 6(3)/ 271-5
・Brenda L. Holbert, Richard L. Baron, Gerald D. Dodd Ⅲ/ Hepatic Infarction Caused by Arterial Insufficiency: Spectrum and Evolution of CT Findings/ AJR Am J Roenquenol/ 1996/ 166(4)/ 815-20
・肝胆膵の画像診断―CT・MRIを中心に― 2013/1/31第一版第三刷 秀潤社 編著：山下康之
寸評：文献を引用するときは引用番号を乗せて、どういう研究デザインのどういう患者の何をみたのか、と明示しなくてはいけません。ま、まだ４月ですからいろいろ基本的なところを覚えていきましょうね。
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