D「研修医だよ。研修医にも基本的には敬語を使え。ただ、まあこれは文脈次第なので、いつもいつも使えと言ってるわけではない。あまり使いすぎると慇懃無礼になるしな」
S「研修医にも敬語使うんですか?」
D「使え。とくに患者がいっしょにいるとき、ナースなど他の医療者の前。他科のドクターの前では必ず使え」
S「え~~どうしてですか~~」
D「ひとつはクレディビリティーの問題だ。若くて未熟とはいえ、研修医も資格を持った立派なプロフェッショナルだ。そのプロに対するきちんとした敬意をお前が示さなかったら、みんなも示さなくなるだろうが」
S「むむ。なるほど」
D「口では言わなくても、上から目線でS先生からタメ口きかれた研修医はナースから「下っ端」のレッテルを貼られる。ただでさえ、研修医なんだから下っ端扱いは当たり前だけど、それを顕在化させて「タメ口」をきくことで、「こいつは軽く扱っても大丈夫」と勘違いするようになる。指示を素直に聞けなくなったり、最悪の場合は嫌がらせ、イジメ的な「指示の回避」をするナースすらいる」
S「たしかに。そういうことってときどきありますよね」
D「患者もそうだ。自分が担当している研修医が周囲から敬語を使われているか、それとも上から目線でタメ口かまされているか。これは重要な問題だ。やはり自分を担当する医者が軽く扱われてるのはよくない。それは、担当研修医を軽んじることになり、自身への検査や治療への疑念へとつながる。そして、皮肉にも患者自身のアウトカムの増悪にすらつながるんだ。逆ピグマリオン効果だよ」
S「岩田健太郎ですね」
D「そうだ。ときには、あんな奴ですら持ち上げとく必要がある。研修医への健全な敬意は、チーム全体の流れをよくし、患者の心象をよくし、そして医療のアウトカムを向上させる」
S「まあ、患者をだまくらかしてるような気がしないでもないですが」
D「そうだよ。ごまかしてる。でも、それで彼らのアウトカムがよくなるんなら願ったり叶ったりじゃないか」
S「そんなもんですかね」
D「そんなもんだよ」
S「ところで、D先生は誰の前でもぼくには敬語使わないですよね」
D「お前まさか、自分が俺様に敬語を使われるべき存在だとか勘違いしてないよな」
S「え、だって研修医ですら、、、その、、」
D「つけあがるなあ!俺様に敬語を使ってもらおうなんぞ、200年早い!一度、王子動物園の象にアタマを踏み潰してもらい、その後パンダにアタマを噛み噛みしてもらうと良い。すこしはましになるだろう」
S「なんで~~~」
第76回「研修医にも敬語を使おう」その2 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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