S「D先生、ちょっと研修医の指導にムラがありすぎるんじゃありませんか?差別的な態度は問題ですよ」
D「あんだって?俺のどこが差別的だよ」
S「だって、研修医のAくん、全然指導してないじゃないですか。女性のBさんばかり指導して。そういうセクハラまがいの指導医は問題ですよ。まあ、D先生が問題指導医であることは前々から薄々気づいていましたが」
D「なんか、どさくさ紛れにさらっと聞き捨てならないことを言うねえ。じゃ、S先生は平等に研修医を教えているというのかい?」
S「はい、もちろんです。男女、出身大学に関係なく、平等に教えますよ、ぼくは。まあ、白状すると、以前は総合診療目指してる人にはエコヒイキする傾向もなくはなかったですが、今は自分の科を希望する、しないにかかわらず丁寧に教えるようにしています。ていうか、それはD先生がそう言ったからじゃないですか」
D「相変わらず、君は脳天気な愚か者だねえ」
S「あんだって?」
D「そうじゃないか。研修医なんて平等に教えていいわけないじゃないか。不平等に教える。それこそが初期研修医教育の要諦だよ」
S「先生、頭、どこかにぶつけました?そんなセリフ病院長に聞かれたら大変ですよ。最近は研修医の親御さんもうるさいですし。バレたらクレームものですよ」
D「ああ、クレームならちょくちょく受けてる。研修医の親が大学の教授だったり、病院長だったりして居丈高に「うちの子どもがひどい研修を受けてる。なんとかしろ」とか言ってくる。ああやだやだ。あんな親の子どもが、そんなたいした医者になれるわけないじゃん」
S「話が横道にずれてますし、これがフィクションでなかったら大変なことになってますよ」
D「君も私も架空の存在だから、言いたい放題なんだもんねええええ」
S「そういう危ない橋を渡るのはいい加減にして、どうして平等じゃいけないのか、教えてください」
D「いいよ、特別に教えてあげよう」
第19回「平等に教えてはならない」その1 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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