注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
2016年7月15日より、レポート提出のルールを変えています。学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。
また、未完成者が完成者より得をするモラルハザードを防ぐために、完成原稿に問題があってもあえて修正・再提出を求めていません。レポート内には構造的に間違いが散在します。学生のレポートの質はこれまでよりもずっと落ちています。そのため、岩田が問題点に言及した「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
どのような症状を見たときにHIV感染を疑うか
HIV換算は様々な症状がみられる。大きく分類して以下の2つがある。
1、 急性期の症状
急性レトロウイルス症候群として知られている。最も一般的な所見は、発熱(75%)、疲労感(68%)、筋肉痛(49%)、発疹(48%)、頭痛(45%)、咽頭通(40%)、頚部リンパ節腫脹(39%)、関節痛(30%)、夜間盗汗(28%)、下痢(27%)である。しかし、急性レトロウイルス症候群は、初期のHIV感染者の推定10~60%で発生しないとされている。これらの所見はいずれも、急性HIV感染症に特異的ではない。インフルエンザの症状にもよく似ている。EBV,CMV,トキソプラズマ、風疹、梅毒、播種性淋菌感染症、ウイルス性肝炎、ウイルス感染症との鑑別も必要だ。
2、 免疫不全の進行による症状
HIV感染者においては、細胞性免疫不全の進行に伴いエイズ指標疾患に代表されされる様々な日和見疾患の発症リスクが上昇する。CD4陽性Tリンパ球数に応じて発症しやすい日和見疾患はある程度定まっている。
500< カンジダ膣炎、持続性全身性リンパ節腫脹(PGL)
200-500 細菌性肺炎、肺結核、帯状疱疹、口腔カンジダ症、カポジ肉腫、口腔毛状白板症、子宮頸癌、悪性リンパ腫、特発性血小板減少症、リンパ性間質性肺炎
<200 ニューモシスチス肺炎、播種性ヒストプラズマ症、播種性コクシジオイデス症、栗粒/肺外結核、進行性多巣性白質脳症、消耗症候群、末梢神経障害、HIV脳症
<100 トキソプラズマ脳炎、クリプトスポリジウム症(慢性)、ミクロスポリジウム症、食道カンジダ症
<50 サイトメガロウイルス感染症、播種性非結核性抗酸菌症、CNリンパ腫
これらの症状とあわせて、他の性感染症の既往、複数の性行為のパートナーを持つ、MSM、麻薬の注射の既往といった背景がHIV感染を疑うのに重要である。
<参考文献>
Up to date; Acute and early HIV infection: Clinical manifestations and diagnosis, May 25, 2016
青木眞;レジデントのための感染症診療マニュアル, 医学書院
国立研究開発法人 国立研究開発センター エイズ治療研究開発センター
http://www.acc.ncgm.go.jp/doctor/020/020/oppDisTra.html
寸評:よく調べていて、内容は問題無いですが、「その先」がないのが残念です。急性HIVで症状が非特異的なのはいいが、「じゃ、どうすればよいの」とか、肺炎や帯状疱疹からHIV感染を導き出すためには、といった「その先」まで思考が深まればベターだったでしょう。
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