注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
MRSAによる骨髄炎におけるリファンピシン併用の意義
MRSA感染の数は増え続けており、2005年アメリカにおける集中治療室の黄色ブドウ球菌感染患者のうちMRSAの占める割合は60%と半数を超えている1)。MRSAは、菌血症を含め様々な感染症を引き起こすが、骨髄炎の起因菌としても重要である。ガイドラインではMRSAによる骨髄炎の治療はバンコマイシンあるいはダプトマイシン、経口投与ではST合剤とリファンピシンの併用、またはリネゾリドやクリンダマイシンが推奨されている2)。これらの治療薬にリファンピシンを併用しても良いという専門家もいるが補助的使用の必要性はあいまいである。では実際併用療法に効果はあるのか検討してみたい。 今回黄色ブドウ球菌感染症に対して抗菌薬単剤とリファンピシン併用療法について検討されたシステマティックレビューでは、リファンピシンの併用は異物を挿入した部位の感染症と骨髄炎の治療に対しては有効であるとしている3)。しかし、臨床研究として検討されている7つの論文においては対象としている感染症は骨髄炎以外にも心内膜炎や異物が挿入されている部位の感染など様々で、起因菌としてMRSA以外にもMSSAを含んでいるなどの問題がある。 一部をあげると、骨髄炎を含めた様々な感染症に対しオキサリシン(あるいはバンコマイシン)を用いた2つの論文では1つはMSSA・MRSA両方を対象とし、治癒率が併用:67%に対し単剤:41%と有意に効果が見られたがもう1つでは(こちらもMSSA・MRSA両方が対象)併用:61% 単剤:56%と有意差は無かった4)5)。異物が挿入されている部位の感染に対しシプロフロキサシンを用いた論文では治癒率は併用療法:100%であったのに対し単剤の場合は58%(P=0.02)と有意に差がついた6)。MRSAによる骨髄炎に限定して行われた臨床研究は検索した範囲では見つける事が出来なかったが、動物実験では著明に菌の数を減らしたという報告もある3)。 以上より、現段階でMRSAによる骨髄炎に対しリファンピシンを併用する事に対し一定の見解は得られていないが、上記のデータより異物が挿入されている場合などは積極的に併用を考慮しても良いと考えられる。今後より限定された大規模な実験が行われる事を期待する。 1) Up to Date: Epidemiology of methicillin-resistant Staphylococcus aureus infection in adults: Deverick J Anderson et al.(2015.02.04閲覧) 2) Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America for the Treatment of Methicillin-Resistant StaphylococcusAureus Infections in Adults and Children: Catherine Liu et al. 3) Adjunctive Use of Rifampin for the Treatment of Staphylococcus aureus Infections:A Systematic Review of the Literature:Joshua Perlroth et al. Archives of Internet Medicine 2008;168(8):805-819. 4) Clinical Study of combination therapy with oxacillin and rifampin for staphylococcal infections: P. Van Der Auwera et al. Reviews of infectious diseases 1983;5(suppl3):S515-522 5) Double-blind,placebo-controlled study of oxacillin combined with rifampin in the treatment staphylococcal infections : P Van der Auwera et al. Antimicrobial Agents Chemotherapy 1985;28(4):467-472 6) Foreign-Body infection Study Group. Role of rifampin for the treatment of orthopedic implant-related staphylococcal infections : Werner Zimmerli et al. The Journal of the American Medical Association 1998;279(19):1537-1541
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