著者献本感謝です。
「分かっている」臨床医は自分たちだけで医療が成立しないことをよく理解している。「分かっている」感染症医は特に微生物検査室の技師さんが自分たちの診療に不可欠であり、ここが「キモ」であることもよく承知している。検査室の営みは患者の目に触れないし、下手をすると医者の目にも触れないのだが(だめだよ)、たとえ同じ保険点数であっても、検査結果の善し悪しは検査技師さんの技量に大きく依存していることを我々はよく承知している。アメリカでも日本でも、それを承知しない病院経営者がここから「手を抜こうと」するのである。診療医やナースの質の劣化はすぐに患者の知るところとなるが、検査室のそれは「ばれにくい」からである。
大楠先生には我々は(も)以前からとてもお世話になっている。その大楠先生の新著がこれだ。大きく3つのパートに分かれている。
1部目は、一般医にはマニアックだがぼくらには「おおっ」の珍しい微生物の総論。学会やカンファでネタになりやすい微生物が多い。とても理解しやすく、勉強になる。白状すると知らない菌もいくつかあった。勉強、勉強だあ。
2部目は、いつもぼくらもお世話になっている遺伝子検査。とくに16SRNAを用いたbroad-range PCRとシークエンス解析。患者の多様化、医療の多様化とともに病原微生物も多様化している。今後もこの検査のお世話になるケースは多いだろう。
最後は、「未来の」検査で重要になるだろう質量分析。現在、こちらのお世話になることはあまりないが、今後の有用性に期待したい。
というわけで、感染症屋は絶対に買いである、、、なんてぼくが書かなくてもみんな買うよね。
西日本は微生物検査技師さんのレベルが高くて、いつも驚かされることが多い。残念ながら、感染症診療については医者の質がこれに追いついていない。これを不幸と見るか、「不幸中の幸い」と見るかは微妙である。
まあ、大楠先生のギャグのレベルはぼくとどっこいどっこいですが、、、
http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=290530
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。