問題点を指摘したら、すぐに直してきました。間違えるのは問題ではない。そこからの修正の速さと適切さが大事なのだ。えらい、えらい。さて、どこが直っているでしょ。
TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)とは
【概説】
TTPは、酵素活性の欠損により、種々の臓器の微小血管に血栓を生じる疾患である。適切に治療されなければ、不可逆性の腎不全、進行性神経障害、虚血性心疾患などを合併し得る致死的な疾患である。
【機序】
vWFは血管内皮細胞で産生される止血因子である。産生された直後のvWFは超高分子量vWFマルチマー(ULvWF)として存在するが、健常者ではADAMTS13という酵素により切断される。しかし、何らかの原因により酵素活性が無くなると、vWFは切断されなくなり、ULvWFが血漿中に出現する。ULvWFは血小板凝集活性が強いため、血小板血栓形成が促進されることがTTPの発症要因として現在理解されている。
【分類】
TTPは先天性と後天性に大別できる。さらに、後天性には特発性と二次性がある。先天性TTP(Upshaw-Schulman症候群)は、ADAMTS13遺伝子の異常により、酵素活性が著減することが原因とされる。特発性TTPは同酵素に対する活性阻害抗体が産生されることにより生じる。二次性TTPは、薬剤や、化学療法、同種造血幹細胞移植、妊娠、抗リン脂質抗体、HIV感染など様々なものが原因として考えられている。
【症状】
以下の5つの特徴がある。
①微小血管内溶血性貧血(100%) |
TTPの診断に重要。①及び②がある場合、TTPもしくはHUSとして血漿交換を開始すべきである(他に明らかな病因がない場合)。 |
②血小板減少症(100%) |
①と同じく重要。しばしば紫斑があり、重篤な出血は少ない。 |
③腎不全(54%) |
腎機能はほぼ正常もしくは軽度の蛋白尿(1-2g/day)を見ることが多い。 |
④神経学的異常(66%) |
動揺性であることが多い。また、錯乱や頭痛などの症状を示すことが多い。 |
⑤発熱(23%) |
5徴の中では頻度は少ない。寒気や突然の高熱ならば、むしろDICや敗血症を疑うべきである。 |
ただし、これら全ての症状が同時に揃っている可能性は低い(3%)。
【検査と診断】
TTPは、除外診断が基本である。特に上記の①、②の症状がTTPの診断に重要であるため、ここでは、主に①、②に関連した検査データについて以下に挙げる。
・ 血小板数減少
・ LDHの上昇、間接Billの上昇、ハプトグロビンの減少、網状赤血球の増加:溶血を反映
・ 末梢血塗抹標本にて破砕赤血球:微小血管内溶血を反映(100倍にて2個以上の破砕赤血球が見えた場合)
・ 幼若赤血球の増加による多染性
・ 骨髄における微小循環の悪化による有核赤血球の増加
【鑑別を要する代表的疾患】
DIC、血管炎・結合組織病(SLE,RAなど)、劇症型抗リン脂質抗体症候群、強皮症腎クリーゼなど様々な疾患が鑑別を要する。今回は、血小板数の低下、血栓形成があるという共通点があることから、主にDICとの鑑別について述べる。
両者は主に病歴とラボデータから区別する。DICでは凝固活性が種々の要因で亢進し血小板の活性化が起きる。TTPでは凝固活性の亢進を伴わず血小板の活性化が起きる。このため、DICはフィブリノーゲン、第Ⅴ、Ⅶ因子の減少、PT、aPTTの延長が見られる。それに対し、TTPでは凝固因子は正常であり、PT、aPTTの延長はほとんど見られない。
【治療】
TTPの治療は先天性と後天性によって異なる。先天性TTPに対しては、現時点では新鮮凍結血漿を2〜3週ごとに輸注し、酵素補充を行うことで発症を予防する治療が行われることが多い。後天性TTPに対しては血漿交換が主に行われる。血漿交換により、ADAMTS13・正常vWFの補充、およびULvWF・抗体の除去がなされる。血漿交換は血小板の値が正常化し、溶血が少なくとも2日間改善するまで毎日続ける必要がある。神経所見、LDHの値がまず改善し、血小板数の回復は数日遅れることが多い。
また、特発性TTPは自己抗体を産生する自己免疫疾患として考えられる。そのため、グルココルチコイドを血漿交換の補助療法とする可能性も示唆されている。しかし、単剤での初期治療は非標準的である。
【参考文献】
① Harrison’s Principles of Internal Medicine(17th edition)
② Up To Date: Diagnosis of thrombocytopenic purpura-hemolytic uremic syndrome in adults
Causes of thrombocytopenic purpura-hemolytic uremic syndrome in adults
Treatment of thrombocytopenic purpura-hemolytic uremic syndrome in adults
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