コリネ

よく見るけれども、よく理解されていないコリネ。上手にまとめました。

 

 

Corynebacteriumの臨床的意義について

Corynebacterium の臨床的意義について 

 

 

Corynebacterium spp.はグラム陽性桿菌であり、ジフテリア毒素を産生するC. diphtheriaeやC.ulcerans等と、そうでない他のCorynebacterium spp.に大別できる。

ジフテリア毒素産生能を有するCorynebacterium spp.のうち、２類感染症に指定されているC. diphtheriaeによる呼吸器、皮膚ジフテリアは、ワクチン普及以前は患者数，死亡率ともに高く（国内1945年患者数約８万６千、死亡率10％）、臨床的に非常に重要な疾患であったが、1948年以後のトキソイドワクチンの普及により患者数は激減し、年間数例が散発的に報告されるだけに至ったため、現在本邦ではまれな疾患となっている。逆に近年報告されたC.ulceransの感染を疑うジフテリア様疾患は、国内では2000年から2010年までに８例が報告されており、人獣共通感染症として近年注目が集まっている。1)6)

他のCorynebacterium spp.はヒトの鼻腔、皮膚、粘膜に常在しており、病原性は弱く、感染症を引き起こすことはまれである。しかし、1970年代にC.jeikeiumについての重度の敗血症が報告された2)7)ことで、多剤耐性を示す院内感染起因菌として注目されるようになった。好中球減少症患者において敗血症、心内膜炎を起因する例が多く報告されており、また腹膜透析患者において腹膜炎、血管カテーテルやペースメーカーなどの体内挿入人工物を有する患者や長期入院、皮膚の挫滅を有する患者において広域スペクトラムの治療薬を投与した際に菌血症、時に手術部位感染や肺炎を起因することがあると報告されている。またC.jeikeiumの場合、多剤耐性を有することが多く、有効な治療薬がvancomycinのみであることも特徴の一つである。また、医療者の手を介して患者から患者へ感染するため、適切な予防が大切である。3)4)6)

しかし、血液培養中にCorynebacterium spp.が検出された場合には必ずそれが起因菌かというと、皮膚の常在菌という性格上必ずコンタミネーションの可能性を考えるべきである。ある文献によるとC.jeikeium以外のCorynebacterium spp.の場合、68％〜98％がコンタミネーションであると報告されている。5)6)

上述のように、Corynebacterium spp.はジフテリア毒素産生能を持つ株による重症感染症、その他の弱毒株による院内感染症という２つの顔を併せ持つ点で臨床的に重要な菌群であるが、Corynebacterium spp.が検出された際には、必ずそれが真の起因菌であるかどうかを検討する必要があると言える。

参考文献

１）NIID報告http://www.nih.go.jp/niid/bac2Coryne_ulcerans/contact.html ,IDWR 2002年第14週号（2002.4/1～4/7）

２）Hande KR, Witebsky FG, Brown MS, Shulman CB, Anderson SE, Levine AS, MacLowry JD, Chabner BA: Sepsis with a new species of corynebacterium. Ann Intern Med 1976;85;423-426

３）van der Lelie H, Leverstein-Van Hall M: Corynebacterium CDC group JK (Corynebacterium jeikeium) sepsis in haematological patients: a report of three cases and a systematic literature review. Scand J Infect Dis 1995；27：581-584.

４）Plerard D,Lauwers S,Mouton MC:peritonitis in a patient undergoing continuous ambulatory peritoneal dialysis. J Clin Microbiol 1983；18：1011-1014

５）Updated Review of Blood Culture ContaminationCLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, Oct. 2006, p. 788-802

６）Mandell Douglas and Bennett’s PRINCIPLE AND PRACTICE OF INFECTIOUS DISEASE : p2695-2699