蜂窩織炎も奥が深いです。
蜂窩織炎の診断と治療戦略
蜂窩織炎は、皮膚と皮下組織のみで、筋膜や筋肉までには広がらない急性の感染症である。病変部は通常、疼痛、熱感、発赤を伴う。丹毒と異なり、境界部分は膨隆せず、境界線もはっきりしていない。
<診断>
軟部組織表層の感染症と深部感染症の鑑別は救命のために非常に重要であり、診断には綿密に病歴と身体所見をとることが必要となる。血液培養の陽性率は5%未満で、軽感染では血液培養やパンチ生検などは通常役に立たない。壊死性筋膜炎に代表される皮下組織、筋膜の障害と単なる蜂窩織炎の鑑別が困難な場合、壊死性筋膜炎を疑えば速やかに外科にコンサルトし、筋膜の壊死を認めれば外科的な除去を行う。
蜂窩織炎の原因微生物としてはS.aureusやS.pyogenesが多いが、他の様々な細菌、真菌によっても起こる。ブドウ球菌性およびレンサ球菌性蜂窩織炎は症状が似ているため、細菌学的同定は困難である。Haemophilus influenzaeは小児の眼窩周囲の蜂窩織炎の原因となる。
その他特別な場合として、ネコ咬傷やイヌ咬傷による蜂窩織炎はPasteurella multocidaが原因となるが、イヌ咬傷の場合Capnocytophaga canimorsusも考慮されなければならない。ヒト咬傷による蜂窩織炎ではStreptococcus viridansや黄色ブドウ球菌などの好気性菌、FusobacteriumやBacteroidesおよびEikenella corrodensなどの嫌気性菌が原因となる。
Erysipelothrix rhusiopathiaeは、魚および家畜のブタに関連して、おもに食肉加工業や魚屋の作業員に蜂窩織炎を起こす。Mycobacterium marinumは、水族館の水に皮膚がさらされたり、プールで受傷すると、蜂窩織炎や肉芽腫の原因となる。
また、バラの木の棘で指を切った園芸家は、Sporothrix schenkii感染のリスクがある。
<治療>
診断(状態)/原因(菌) |
処方例 |
StreptococcusおよびS.aureus |
軽症:CDX(または第1世代経口セフェム) 0.5〜1g 経口1日2回 |
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重症:CEZ 1〜1.5g 静注 |
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MRSA疑い:VCM 1g 静注 または LZD 600mg 静注1日2回 |
Haemophilus influenzae |
CXM (50mg/kg 静注q8h または 10〜15mg/kg 経口1日2回) または CTRX 50mg/kg q24h |
ネコ•イヌ咬傷 |
AMPC/CVA 875/125mg 経口1日2回 または 500/125mg 経口1日3回 |
ヒト咬傷 |
早期(未感染):AMPC/CVA 875/125mg 経口1日2回•5日間 |
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後期(感染徴候あり):ABPC/SBT 1.5g静注 q6h |
Erysipelothrix rhusiopathiae |
CAM 200mg 経口1日2回 |
Mycobacterium marinum |
CAM 200mg 経口1日2回 |
Sporothrix schenkii |
イトラコナゾール 100〜200mg 経口 |
※ 咬傷では、狂犬病ワクチン投与や破傷風トキソイドも施行する。
参考文献:
ハリソン内科学 第3版 メディカル•サイエンス•インターナショナル
Up to Date Cellulitis and erysipelas Larry M Baddour,MD,FIDSA
レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版 青木眞 医学書院
感染症診療スタンダードマニュアル 第2版 羊土社
サンフォード感染症治療ガイド2009 Life Science Publishing
WM感染症科コンサルト メディカル•サイエンス•インターナショナル
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