こんなお題でレポート書かせる感染症屋は世界ひろしといえども僕くらいだろ。
感染症BSLレポート
~ディエゴ・マラドーナ、釜本邦茂、遠藤保仁が罹患した感染症 5つの病原体について~
ディエゴ・マラドーナ、釜本邦茂、遠藤保仁が罹患した感染症はウイルス性肝炎である。その病原体であるHAV、HBV、HCV、HDV、HEVについて述べることにする。
5種類の菌各々の大きさ、遺伝子、エンベロープの有無、感染経路、潜伏期間、発症形式、原因について以下の表に示す。
|
HAV |
HBV |
HCV |
HDV |
HEV |
大きさ |
27nm |
42nm |
40~60nm |
35~37nm |
27~34nm |
遺伝子 |
RNA |
DNA |
RNA |
RNA |
RNA |
エンベロープ |
- |
+ |
+ |
+ (HBs抗原) |
+ |
感染経路 |
糞口感染 |
体液感染 |
血液感染 |
体液感染 |
経口感染 |
潜伏期間 |
30日 |
60~90日 |
50日 |
60~90日 |
40日 |
発症形式 |
急性 |
潜行性/急性 |
潜行性 |
潜行性/急性 |
急性 |
原因 |
・ 飲食物 ・ 性交渉 ・ 保育園 ・ 注射 |
・ 性交渉 ・ 分娩時 ・ 輸血 ・ 注射 |
・ 輸血 ・ 注射 ・ 性交渉 ・ 分娩時 |
・ 性交渉 ・ 分娩時 ・ 輸血 ・ 注射 |
・飲食物 |
HAV:HAVに感染する人の数は近年減少傾向にあり、米国では1995年から2007年の間で92%減少している。
(∵ワクチン接種が推奨されるようになった)
HBV:HBs抗原は感染者のあらゆる体液から検出され、精液や唾液も、経皮的あるいは非経皮的に投与すると感染性を持つことが動物実験で示されている。
HCV:感染の頻度は世界中ほとんどの国で同様であるが、エジプトなどいくつかの国は感染頻度が非常に高い。
(∵汚染された器具をしようした医療行為や安全でない注射手技)
HDV:HDVはHBVの存在下でしか完全なウイルス粒子になることができない。よって、HBVとの同時感染か、HBVが既に感染している場合にしか感染しない。
HEV:HEVはアジア、アフリカ、中東、中米などに多く、北アフリカと中東ではHEVによる肝炎が2番目に多くなっている。人から人へは感染しないが、人畜共通感染ともいわれている。(∵調理された鹿肉、猪肉などを食べた人がHEVに感染したということが日本やドイツなどから報告された)HIV患者への感染を認めたという報告もあり、まだ真相は明らかではないようだ。
参考文献
Overview of hepatitis A virus infection in adults ver19.2(Up To Date)
Hepatitis E virus infection ver.19.2(Up To Date)
MMWR Surveill Summ.2009 May 22;58(3):1-27
Clin Infect Dis 2006;42:490
Med Res 1957;45:101
Lancet 1988;2:1199
J Med Virol 1991;34:232
JAMA 1990;263:3281
N Engl J Med 2004;351:2367
Emerg Infect Dis 2004;10:953
J Clin Microbiol 2002;40:117
J Clin Virol 1999;14:51
Ann Intern Med 2009;150:226
ハリソン内科学第3版 福井次矢・黒川清 監修 pp.1999~2008
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