結論から言うと、どちらが正しいかを断言するのは現段階では不可能だと思います。さて。
- 我が国では、阪大微研、北里、化生研、デンカの4社がH1N1ワクチンを製造している。基本的には従来の季節性インフルワクチンと同じ工程を経ており、したがって鶏卵を用い、アジュバントを用いず、経皮接種を基本とする。有料
- 輸入ワクチンについては、ノバルティスのワクチンは細胞を使用しており、アジュバントありで筋注。そのプレリミナリーデータはNEJMに詳細が報告されている。
- content.nejm.org—NEJMoa0907650 <http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0907650>
- GSKのワクチンについてはデータ見つけられず、、、、
- 米国では、4社がH1N1ワクチンを提供している。無料(報道による)。そのうち1つは経鼻生ワクチンだが、抗体産生能は高くないといわれ、また免疫抑制者や妊婦には禁忌である。米国産のワクチンはいずれも鶏卵を用いており、注射薬はアジュバントを用い、筋注である。基本1回打ちだが、9歳までは2回。ただし、ACIP、CDC、各社パッケージインサートを読む限り、1回、2回の根拠は従来の季節性インフルのデータを踏襲しているように読み取れる(未確認)。
- www.mhlw.go.jp—infu091016-02.pdf <http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu091016-02.pdf>
- www.cdc.gov—rr5810a1.htm <http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5810a1.htm>
- www.cdc.gov—vaccine_keyfacts.htm <http://www.cdc.gov/h1n1flu/vaccination/vaccine_keyfacts.htm>
- www.fda.gov—UCM182401.pdf <http://www.fda.gov/downloads/BiologicsBloodVaccines/Vaccines/ApprovedProducts/UCM182401.pdf>
- www.fda.gov—UCM182242.pdf <http://www.fda.gov/downloads/BiologicsBloodVaccines/Vaccines/ApprovedProducts/UCM182242.pdf>
- www.fda.gov—UCM182404.pdf <http://www.fda.gov/downloads/BiologicsBloodVaccines/Vaccines/ApprovedProducts/UCM182404.pdf>
- www.fda.gov—UCM182406.pdf <http://www.fda.gov/downloads/BiologicsBloodVaccines/Vaccines/ApprovedProducts/UCM182406.pdf>
- ちなみに、米国でも10人分のバイアルを用いており、1回打ち用と使い分ける模様。本当に上手く活用できるか?注目。
- EUでは鶏卵かベロ細胞、アジュバントの有無は様々だがすべて筋注で2回打ち。
- www.mhlw.go.jp—infu091016-02.pdf <http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu091016-02.pdf>
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- 1回打ちのHIでのseroprotection率については、21日後でkitasatoとnovartisで特に大きな差はなかった。大体、80%
- 対象は成人200名だが、気管支喘息2名などの基礎疾患を有するものや妊婦(1名)などが混じっている。
- www.mhlw.go.jp—infu091016-01.pdf <http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu091016-01.pdf>
- ただし、Novartisのワクチンは、2回打ちの方がmicroneutralization titreでは勝っていた。HIでは同等。国内ワクチンでは2回打ちのデータはまだない。どちらの抗体測定の方が臨床的に正確かは、(岩田の理解では)まだ不明。
- content.nejm.org—NEJMoa0907650 <http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0907650>
- 国内ワクチンでは、倍量筋注の方が抗体産生能が高く、副作用も数的には少なかった。ただし、重篤な副作用2名は倍量筋注グループからであった。
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- 以上から、コメント
- 国内ワクチンは1回接種で輸入ワクチン同様の免疫反応を得られる可能性が高い。
- しかし、そのことは2回打ちと「同等」あるいはそれ以上、という事実を示したわけではない。
- したがって、米国とEUで見解が異なるのも理解できるし、これは態度やロジスティックスの問題であり、どちらかが「科学的に正しいか」を示したものでは(まだ)ない。
- 1回打ちでよい、という意見の傍証に、臨床試験で予想より高いtitreがでており、過去の感染やワクチンが(事前抗体産生があるなしとは別に)ブースター効果を及ぼしている可能性がある、というものがある。
- 逆に、2回打ちが必要だ、という根拠は、季節性インフルワクチンが新型に抗体産生能を及ぼさなかったこと(反論はBMJの後向き研究にあるが、現在議論は定まっていない)、通常初回のワクチンは2回打ちが必要なこと。
- 今回の国内のスタディーは、あくまでも21日後の抗体産生能なので、流行期間中の臨床的な効果(effectiveness)やsecondary vaccine failureのリスクを考えると、1回打ちで充分、という結論を下すのはまだ早すぎると思う。
- 逆に、「1回打ち」ではだめ、というデータもないので、ことさらに1回打ちを否定する材料にも乏しい。
- 基礎疾患を有するもの、妊婦についてはデータ不足で何とも言えず
- 実は、倍量、筋注の方がよいのでは、という可能性も。これは要検討。この場合、倍量を必要とするので、人数のアドバンテージがコンプロマイズされる。15マイクロの筋注というオプションも真剣に検討しなければならないだろう。
- なお、季節性インフルワクチンの高齢者1回打ちのオプションができたのは喜ばしい限り。少なくとも、日本における予防接種の議論の質は過去に比べれば格段に上がっている。これまでが酷すぎた、という話もあるが。
- www.mhlw.go.jp—infu091016-04.pdf <http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu091016-04.pdf>
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