学生、研修医のためのイブニングセミナー。今日は僕の担当です。下痢症がテーマです。そのレジュメはこんな感じ。
感染性下痢症 last updated June 21, 2009
▼ 下痢症の何が問題か
• 毎年250万人の死亡
• 適切なケアがあれば死なない
▼ 伝播は三種類
• 食べ物
• 水
• 人
▼ 細菌性下痢症
▼ 三大原因菌
• サルモネラ
• 赤痢菌
• カンピロバクター
▼ その他
• 大腸菌
• Yersinia
• コレラ菌
• Vibrio parahaemolyticus
• など
• 臨床症状で区別するのは困難で、便培様が必要
▼ サルモネラ
• 好気性グラム陰性桿菌
• 運動性あり
• 乳糖非発酵
▼ 三大種
• チフス菌
• S. choleraesuis
• S. enteritidis
• チフス菌は基本的に人感染のみ
• 細胞内に入る。ラッフル膜の形成
• 大腸、小腸粘膜に
▼ チフス菌
• 細胞溶解をあまり起こさない
• 下痢も少なめ
• 細胞から腸間膜リンパ節や血流に
• typhoid fever
▼ S. choleraesuis
• 血流感染が多い
• 非チフス性菌血症の最大の原因
▼ リスク
• 菌量
• 制酸剤
• 胃切除
• 抗菌薬使用
• 免疫能の低下
• 鎌型赤血球症−>サルモネラ骨髄炎のリスク
• 卵製品、アイスクリーム、山羊チーズ、パプリカ、白身の魚
• 亀、イグアナ、鳥類
• 途上国
• 夏という季節
▼ 赤痢菌
• グラム陰性桿菌
• 非運動性
• 乳糖非発酵
▼ A-Dの血清型
• A. S. dysenteriae
• B. S. flexneri
• D. S. boydii, S. sonnei
• 腸管内皮細胞やM蛋白でラッフル膜を形成
• 溶血毒素あり。膜内にとどまらず、細胞質に
• 細胞傷害性の赤痢菌毒素。早期の細胞死。細胞間伝播
• 急性炎症反応、潰瘍。血流感染はまれ
• 胃酸に強く、200くらいの少ない菌量で感染
• 動物宿主なし。人から糞口感染。便座。デイケアセンター。施設など。アメリカ先住民特別保留地。熱帯地域でのハエ
▼ カンピロバクター
• コンマ型グラム陰性桿菌。gull wing
• C. fetusを除き微好気性。25℃では増殖できず。42℃が至適温度。酸素濃度6%、CO25−10%。選択培地Campy BAPが推奨
• ライフサイクルは不明。探求に取り込まれる。潰瘍や炎症。
• C. fetusは血流感染が多い。
• 酸感受性があるため多くの菌量が必要。
• 家禽、とくに鳥類に感染。高体温のため?他にも水、生乳、羊、牛、豚、は虫類にも
• 夏に多い。
▼ 大腸菌
• O抗原(リポ多糖体)、H抗原(鞭毛)で分類。例 O157H7
• ETEC.コレラ様毒素。水溶性下痢
• EPEC。炎症と水溶性下痢。途上国で多い。
▼ EHEC。腸管出血性のベロ毒素やタンパク合成を阻害する志賀様毒素産生。出血性腸炎。HUS。
• 牛が主な保有者。挽肉、ミルク、リンゴジュース、ほうれん草など。
• 先進国の夏に多い。
• EIEC。赤痢菌様の進入。途上国に多いが、アウトブレイクはまれ。毒素なし。
• EAEC。腸管凝集性大腸菌。EaggEC。水症性下痢を起こすエンテロトキシン。大腸粘膜に凝集して接着。旅行者下痢症の原因。
▼ エルシニア
• グラム陰性桿菌
• 大量の菌の摂取が必要
• 回腸末端粘膜。腸間膜リンパ節腫脹。虫垂炎と鑑別。
• 北欧、南米、アフリカ、アジアに多い。
• 主に小児
• 汚染された肉。4℃で増殖可能。低温殺菌ミルク、冷凍食肉。
• 冬に多い。
▼ ビブリオ
• コレラ菌とparahaemolyticus
• 湾曲したグラム陰性桿菌
• 鞭毛と運動性
▼ コレラ菌
• 汚染された水、即持つ。小腸性下痢。
▼ コレラ毒素
• アデニル酸シクラーゼ活性。cAMP増加。大量の水溶性下痢。
• 水中、貝などで多い。バイオフィルムで自己を保護。
• インド、バングラディシュでアウトブレイク。1991年はペルーで。
▼ V. parahaemolyticus
• 好塩性
• 溶血性と病原性に関連?
• エンテロトキシン
• 貝と海水
• 日本に多い。
▼ 細菌性腸炎の特徴
▼ 潜伏期は
• サルモネラ 8−24時間
• 赤痢菌 36−72時間
• EHEC 4日間くらい
▼ 水溶性下痢
• ETEC,EPEC,EAEC,ビブリオ
▼ 粘液性便。
• 赤痢
▼ 血性便は潰瘍と関係
• 赤痢、カンピロバクター、ETEC、EIEC、EHEC
• 白血球は正常なことが多い
▼ typhoid fever, or enteric fever
• チフス菌、とparatyphi
• 潜伏期間 8−14日。菌が少ないと潜伏期も長くなる。
• 熱。初発はインフルエンザ様。全身倦怠感、全身痛、嗜眠など。喀痰のない咳、腹部違和感、便秘。2週目から血性下痢。敗血症性ショック、腸管穿孔は10%。比較的徐脈、ばら疹2−3週で、2−4日続く。圧迫で退色。正球性貧血と白血球減少。白血球上昇もあり。血液培養は1週目で90%、2週目で50%。
• 定義に混乱。C. fetus, エルシニアを含むことも。
▼ ウイルス性下痢症
▼ 多いのは、
• ノーウオーク
• ロタ
• アデノ
• アストロ
▼ ノーウオーク
• 一本鎖RNAカリシウイルス
• 杯のかたち、calixがあるのでその名前
• 水、食べ物、ヒトヒト
• 塩素に耐性、熱にも耐性
• 貝類
• 世界最大のアウトブレイクの原因
▼ ロタウイルス
• 二本鎖RNA。車輪型なのでロタ
• 乳児下痢症の原因として有名。3歳で90%が抗体を。
• 塩素で不活化
• ワクチンあり
▼ アデノ
• 二本鎖DNA
• 二つの血清型が腸性
• 小児、乳児で2番目に多い。
• 夏に多い
▼ アストロ
• 一本鎖RNA
• 干しに見える。
• 施設などで多い。
▼ 臨床像
• 熱はある
• 便スメアで白血球は陰性
• ロタなどはELISAも
• 自然治癒。輸液。
▼ 寄生虫
• アメーバ
• ランブル鞭毛虫
• クリプトスポリジウム
• イソスポラ、ミクロスポリジウム症など
▼ アメーバ
• 赤痢アメーバ
• E. coliはcystで区別つかず。病原性なし。
• 他に、Entamoeba hartmanni, E. polecki, Endolimax nana, Iodamoeba buetschlii
• 栄養型では赤血球が見られる。
• 途上国、同性愛など
• 臨床上は、水溶性下痢、不快感、腹痛(表在性か侵襲性かで症状は変わる)。
• 潰瘍性大腸炎と間違えられやすい。ステロイドは御法度。
• アメーバ肝膿瘍。右季肋部痛。肝腫大が50% に
• 便スメア、抗体。DNAプローブ、吸引。
• 治療はメトロニダゾール10日間、あるいはチニダゾール3−5日間。
• パロモマイシン、ヨードキノール、ジロキサニドフロエート
▼ ランブル鞭毛虫
• リスクはX連鎖無ガンマグロブリン血症。液性免疫が大事。
• 汚染された伊豆で多い。
• 腹痛、げっぷ、腹満、小児では水溶性下痢。吸収不良、慢性下痢、体重減少。
• 内視鏡、ELISA、免疫蛍光抗原試験、十二指腸生検や吸引
• 治療はメトロニダゾール
▼ クリプトスポリジウム
• 細胞性免疫の欠損がリスク
• 腸コクシジウムとして分類。マラリア類似。
• 機序は不明
• 治療は???
▼ Isospora belli
• 熱帯で多い。
• AIDSで多い。
• 治療はST
▼ Microsporidia
• 非常に小さい
• AIDSで。
• 胆嚢炎も
• ギムザ、チールニールセン、グラム染色も。
▼ 治療はアルベンダゾール?再発は多い。
• フマギリンも(アスペルギルスの胞子)骨髄毒性も、、、
▼ 診断
• ヨード染色
• キニヨン抗酸菌せんしょく。
▼ 抗菌薬関連下痢症
• MRSAはまれ
• C.diffが多い。
▼ C.diff
• 偏性嫌気性、芽胞形成性グラム陽性桿菌
• difficult to culture
• サイクロセリン・セフォキシチン・フルクトース寒天(CCFA)
• トキシンA、B
• 2日を超えて入院する患者の10%で発症。
• 広域抗菌薬。クリンダマイシン、セフェム
• 抗がん化学療法 メトトレキセート、5FU,ドキソルビシン、シクロホスファミド
• 芽胞により病院で伝播。
• 抗菌薬開始後5−10日で。最大10週間も
• 劇症大腸炎が10% で
• 治療はフラジール、経口バンコマイシン10日間。
•
• 参考 感染症診療スタンダードマニュアル 羊土社 感染症診療Q&A 総合医学社
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