テーマ:ARBと比較してACE阻害薬でどの程度誤嚥性肺炎が予防できるか
【序論】
ACE阻害薬はサブスタンスPの分解を抑制し、嚥下・咳反射を改善するため、誤嚥の予防として用いられることがある。今回担当した症例は誤嚥性肺炎であり、高血圧に対してARBが使用されていたため、これをACE阻害薬に変更することでどの程度、誤嚥性肺炎を予防することができるのか疑問に思い考察することにした。
【本論】
論文を検索したところACE阻害薬とARBとを直接比較した研究を見つけることはできなかった。
よって、まずACE阻害薬とカルシウム拮抗薬とを比較した研究1について述べる。
異なる降圧薬を投与されている全708人の外来患者において三年間で何人肺炎を引き起こしたかを調べたところ、65歳以上の患者ではACE阻害薬を投与されている122人のうち2人(2%)が、カルシウム拮抗薬を投与されている132人のうち1人(1%)が、いずれも投与されている104人(2%)のうち2人が新たに肺炎を引き起こした。
よって、高血圧のある高齢者においてACE阻害薬とカルシウム拮抗薬とで誤嚥性肺炎の予防効果に差異はないと結論づけられた。
また一方で、既往に脳卒中のある患者やフレイルの患者ではACE阻害薬による誤嚥性肺炎予防効果が期待できるという研究2も報告されていた。
ARBについては誤嚥性肺炎を予防する効果が全くないとする報告3 がされていた。
【結論】
以上より、ARBと比較した際に、ACE阻害薬は既往に脳卒中のある患者やフレイルの患者において、より誤嚥性肺炎を予防する可能性があるということが示された。
が、一方で、その可能性がどの程度であるかは現状ではわからなかった。
今回の症例では、既往に脳卒中はなく、フレイルもないため薬物の変更は必要ないと考えた。
参考文献
1 Teramoto S, Ouchi Y. ACE inhibitors and prevention of aspiration pneumonia in elderly hypertensives. Lancet1999; 353: 843.
2 Teramoto S, Kume H, Fukuchi Y. Antihypertensive drugs in Japan. Lancet 2001; 357: 720–721.
3 Teramoto S, Yamamoto H, Yamaguchi Y, Hanaoka Y, Ishii M, Hibi S and Ouchi Y. ACE inhibitors prevent aspiration pneumonia in Asian, but not Caucasian, elderly patients with stroke.Eur Respir J. 2007 Jan;29(1):218-9.
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