「熱傷患者において抗菌薬の予防的投与は有効か。」
【序論】 熱傷治療において感染症は注意すべき事項である。抗菌薬を予防的に投与することで感染症を減らせ
るのではないかと考えた。臨床的に有効性があるか疑問に思い、調べた。
【本論】
熱傷患者に対する抗菌薬の予防的投与に関して、Barajas-Nava LA らが 2013 年に行ったシステマティッ
クレビュー(Cochrane)がある。予防的抗菌薬投与によって、下痢やアレルギー反応のリスク上昇(Alexander 2009; Church 2006; Ergün 2004; Still 2002)や耐性菌発生を促進すること(Altoparlak 2004; Church 2006; Murphy 2003)を鑑みると、有効性の有無を調べることが重要であるとしてこのレビューが行われた。これに は 36 件のランダム化比較試験(参加 2117 人)が含まれ、内訳は以下の通りである;局所 26 件(72%)は、 全身投与 7 件(そのうち 4 件は周術期に投与、3 件は入院時または通常治療中に投与)、難吸収性抗菌薬 の投与 2 件、気道を通しての局所抗菌薬の投与 1 件。
スルファジアジン銀の外用と包帯/代用皮膚を比較すると(11 件の試験、参加 645 人)、熱傷創感染が有 意に増加し、入院期間が延長することを示唆していた(OR = 1.87; 95% CI: 1.09 to 3.19, I2 = 0%)。他の形態で の予防的投与は熱傷創感染に対する効果が不明確であった。トリメトプリム/スルファメトキサゾールの全 身投与で肺炎の発生率が減少した報告(RR = 0.18; 95% CI: 0.05 to 0.72) (Kimura 1998、参加 40 人)や、難 吸収性抗菌薬とセフォタキシムの使用で MRSA の発生率が有意に増加した報告(RR = 2.22; 95% CI: 1.21 to 4.07)(Barret 2001、参加 23 人)がある。
ここで述べられている結論は、全体として研究のバイアスのリスクが高い、または不明であり、サンプル サイズが小さいものが多いため、熱傷患者における抗菌薬の予防的投与の効果についてエビデンスがほ とんどないとしていた。
【結論】 上に述べた通り、熱傷患者における抗菌薬の予防的投与の効果を示すエビデンスはほとんどなかった。
下痢やアレルギー、耐性菌発生のリスクを考えると、熱傷患者において抗菌薬の予防的投与は行わない 方がよいと考えた。
【参考文献】
Barajas-Nava LA, et al. (2013) Antibiotic prophylaxis for preventing burn wound infection. Cochrane Database Syst Rev 6:CD008738, 2013
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。