注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
「慢性骨髄炎において外科的デブリードマンの範囲は予後に影響を与えるか」
慢性骨髄炎とは細菌の持続感染、腐骨の存在、軽度の炎症の持続、瘻孔によって特徴付けられる骨の長期にわたる感染症と定義づけられている1)。慢性化し腐骨を形成すると難治化、再燃しやすいため長期間の治療が必要となる。抗菌薬のみでは治癒は困難で、外科的デブリードマン+長期の抗菌薬治療が必要とされている2)。しかし外科的デブリードマンと抗菌薬治療を行っても20~30%の感染の再発があるという報告がある1)。そこで外科的デブリードマンに着目して外科的デブリードマンの範囲によって予後に変化があるかについて考察する。今回のレポートでは予後を感染の再発率として考えることとする。
- H. R. W. Simpsonらは50人の慢性骨髄炎患者を外科的デブリードマンの切除範囲によって3つのグループに分け、感染の再発率を調査した3)。グループ1(n=15)は5㎜以上の健常域をもたせて腐骨を切除し(切除面はパプリカ徴候陽性で明らかに健常域である)、グループ2(n=29)は5㎜以下の健常域をもたせた腐骨の切除、グループ3(n=6)は感染域のデバルキングを行った。術後は全患者に6週の抗菌薬静注、その後6週の抗菌薬の経口投与を行った。またグループ2はCierny-Mader classificationに基づいて感染、手術に対して正常な生理的反応を示すタイプA(n=13)と感染に対する反応に影響を与える局所性、全身性の因子をもつタイプB(n=16)に分けられた。
結果はグループ1に再発した患者はおらず、グループ2は8人(28%)が再発しいずれもタイプBの患者であった。グループ3は1年以内に全ての患者が再発した。
以上の結果より、骨切除の範囲によって予後すなわち感染の再発率は異なり、感染への反応に影響を与える因子を持たない患者の場合はグループ2に行った5㎜以下の健常域を持たせた腐骨の切除が望ましいといえる。
ただ、この切除範囲の決定は術中における術者の判断によるもので、パプリカ徴候のように肉眼的判断が必ずしも健常組織を示しているとは限らない。そこでLucian Fodorらは5㎜を超える広範囲骨切除を提唱したが、骨皮質の体積が70%以下になると医原性骨折のリスクが高くなる4)ので切除に加え、予防的創外固定を用いることを推奨している。
したがって、慢性骨髄炎における感染の再発を防ぐためには外科的デブリードマンを5㎜以下の健常域を持たせた腐骨の切除もしくは、予防的創外固定の管理が適切に行うことが可能なら広範囲骨切除が望ましいと考える。
1) Ketan C Pande et al. Optimal management of chronic osteomyelitis: current perspectives. Dovepress journal. 31 August 2015 Volume 2015:7 Pages 71-81.
2) 岡秀昭「感染症プラチナマニュアル2018」メディカル・サイエンス・インターナショナル
3) Simpson AH et al.Chronic osteomyelitis. The effect of the extent of surgical resection on infection-free survival. J Bone Joint Surg Br. 2001 Apr;83(3):403-7.
4) Lucian FODOR et al. Prophylactic external fixation and extensive bone debridement for chronic osteomyelitis. Acta Orthop. Belg., 2006, 72, 448-453
寸評:文章が分かりづらかったので、だれが読んでも同じに解釈できるような文章にしましょう。議論の混乱もややありました。
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