注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
心機能低下の患者における非心臓手術後の死亡のリスクはどれほどであるか?
私が担当した患者は心エコーにおいて収縮能の低下がみられたため一度手術を延期しており、このとき患者が死亡するリスクがどの程度あったのか興味を持ったため調べた。
心機能低下の評価の方法として、世界的に使われているリスク指標にRCRI(Revised Cardiac Risk Index)がある。この指標では、高リスクの手術(腹腔内、胸腔内、血管手術)であること、虚血性心疾患、うっ血性心不全、脳血管疾患の病歴があること、インスリンにより術前治療されていること、術前血清クレアチニン≧2.0mg/dLであること、の4点をそれぞれ1点として非心臓手術後の心血管イベントのリスクと死亡率を評価している。0点、1点、2点、3点以上でそれぞれ心血管イベント発生率は0.4%、1.0%、7% 、11%であった。また、心血管イベントに伴う死亡率はそれぞれ0.3%、0.7%、1.7%、3.6%であった。[1]その後、このRCRIが実際に正しいのか検証したSystematic reviewでは、心血管イベントに関しては事前のリスク評価と実際のイベント発生率に相関性があったとされているが、術後の心血管イベント以外を含めた、全体の死亡率は評価することができなかった。[2]
また、別の研究では、患者を①冠動脈疾患の既往がある患者(ハイリスク群)、②末梢血管疾患があるが冠動脈疾患の既往がない患者(中間リスク群)、③心血管疾患のリスクファクターがあるが臨床的には発症していない患者(ローリスク群)、④心血管疾患の既往、リスクファクター共に存在しない患者(ノーリスク群) の4群に分けて術後の心筋梗塞の発生を調べている[3]。この研究では、術後の全死亡率・心血管イベントによる死亡率はノーリスク群で1.2%・0%(8/652人・0/652人)、ローリスク群で3.1%・0.4%(8/256人・1/256人)、中間リスク群で3.4%・0.4%(9/260人・1/260人)、ハイリスク群で4.1%・2.2%(13/319人・7/319人)であった。
EF低下のような心機能低下を示す所見ごとの詳細な死亡率に関する研究は見つけることができなかった。しかし、上記2つの研究から術後の死亡リスクは心機能そのものよりも心血管イベントを中心とした複合的な要素が関係していることがわかった。
<参考>
[1] Lee TH, Marcantonio ER, Mangione CM, et al. Derivation and prospective validation of a simple index for prediction of cardiac risk of major noncardiac surgery.
[2] Ford MK, Beattie WS, Wijeysundera DN. Systematic review: prediction of perioperative cardiac complications and mortality by the revised cardiac risk index.
[3] Carol M. Ashton, MD, MPH; Nancy J. Petersen, MS; Nelda P. Wray,et al.The Incidence of Perioperative Myocardial Infarction in Men Undergoing Noncardiac Surgery
寸評:「心機能低下」の意味がぐちゃぐちゃだったので、グチャグチャなレポートになりました。自分のクエスチョンに寄り添ってレポート書くのって難しいですね。
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