注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
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菌種によってカンジダ血症の予後は変わるのか?
カンジダの菌種はC. albicans、C. glabrata、C. tropicalisなどさまざまである。カンジダ感染の原因菌種は抗真菌薬の導入などによって多様化している。そこでカンジダ血症に絞って、その予後は菌種によって違うのかどうか文献を元に考察した。
O.Lortholaryらは2002年から2010年にかけてパリの24の病院に入院したカンジダ血症の患者に関するサーベイランス(YEASTISプログラム)を行っている。そのサーベイランスでは、ICUに入院している1169人のカンジダ血症患者の中で、血液培養でカンジダが陽性という結果が出てから30日以内に患者が死に至る確率について統計的に処理している。それによると、C. albicans血症のものを基準として年度と施設によって生まれる差を調節しているadjusted ORは、C. kefyr血症では3.88 (95%CI:1.14-13.26),C. krusei血症では1.78 (95%CI:0.71-4.47),C. tropicalis血症では0.99 (95%CI:0.61-1.63),C. glabrata血症では0.65 (95%CI:0.43-0.98),C. parapsilosis血症で0.43 (95%CI:0.25-0.76)という結果が出ている。95%信頼区間を加味することで、少なくともC. kefyr血症はC. albicans血症よりも致死率が高く、C. glabrata、C. parapsilosis血症はC. albicans血症より致死率が低いと言える。しかし、これはadjusted ORの交絡因子としてカンジダ血症患者の背景による差を調整していないものである。例えばC. tropicalis血症は血液悪性腫瘍で有意に発生しやすく(p=0.007)、C. krusei血症は固形腫瘍や臓器移植を行った患者に有意に発生しやすい(それぞれp=0.012,0.028)という特徴があるのだが、それに関する調整は行われておらずC. tropicalis、C. krusei血症に関するadjusted ORは信頼度が高くない。[1]
この研究における菌種による30日以内の患者死亡率に差は認められ、菌種によってカンジダ血症の予後はまちまちであるという結論には達した。しかし、この研究を基にそれぞれの予後の順位づけを厳正に行うためには、交絡因子に患者背景を加味したadjusted.ORが必要であっただろう。
〈参考文献〉
- Lortholary O, Renaudat C, Sitbon K et al (2014) Worrisome trends in incidence and mortality of candidemia in intensive care units (Paris area, 2002–2010). Intensive Care Med 40(9):1303–1312
寸評:95%信頼区間とORのよい学習になりましたね。
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