注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
胸膜感染に対するドレナージで適切なチェストチューブ径はどの程度か?
胸膜感染(膿胸、Complicated pleural effusion)は死亡率が22%と致死的な疾患である1)。チェストチューブによるドレナージが外科的な手術・抗菌薬治療とともに治療法として挙げられているが、チェストチューブの径についての記載は、36Fr以上を推奨する教科書2)や10~14Frでよいとするガイドライン3)があるなど一定しない。そこで今回は、胸膜感染に適切なチェストチューブ径について考察した。
Najibらは、胸膜の感染が疑われる患者(明確な基準記載されず)において、ストレプトキナーゼの胸腔中投与に対する研究において、チューブのサイズ(10Fr未満、10〜14Fr、15〜20Fr、20Fr以上)と3か月後のアウトカム(死亡、外科的手術、入院期間、肺機能)の関係および、チューブの太さ(15Fr<、15Fr>)とPain Score(なし、軽度、中等度、重度の4段階)との関係に有意差があるかを調べている4)。その結果、アウトカムについてはいずれも有意差を認めなかった。Pain Scoreは、挿入時とドレナージ中に15Fr>の群で有意に高かった。以上の結果より、論文では14Fr以下のチューブでは1日数回生食によるチューブの洗浄が必要であるが、臨床的な有意差がなく、痛みの度合いも有意に低いことから14Fr以下のチューブを推奨していた。
この研究は小規模でランダム化した研究でなく、胸膜感染の定義が明記されておらず、有効性には疑問が残る。しかし、これ以外に胸膜の炎症のドレナージ径に対しての論文はなく、外傷性気胸、血胸に対して、2つの論文があるだけであった5)6)。いずれの論文でもチェストチューブ径による予後の変化はなかった。以上から、現在は14Fr以下のチェストチューブ径が推奨されると考えた。
参考文献
1) Maskell NA et al. First Multicenter Intrapleural Sepsis Trial (MIST1) Group First Multicenter Intrapleural Sepsis Trial (MIST1) Group U.K. controlled trial of intrapleural streptokinase for pleural infection. N Engl J Med. 2005;3529:865-
2) General Thoracic Surgery, 5th edition. Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2000; P699–708.
3) Davies HE, Davies RJ, Davies CW et al. Management of pleural infection in adults: British Thoracic Society Pleural Disease Guideline 2010. Thorax 2010
4)Najib M Rahman, BM, BCh; Nicholas A. Maskell, DM .et al.The Relationship Between Chest Tube Size and Clinical Outcome in Pleural InfectionChest. 2010;137(3):536-543.
5) Kulvatunyou N et al. 14 French pigtail catheters placed by surgeons to drain blood on trauma patients: is 14-Fr too small? :J Trauma Acute Care Surg. 2012 Dec;73(6):1423-7.
6) Inaba K. .et al.Does size matter? A prospective analysis of 28-32 versus 36-40 French chest tube size in trauma. :J Trauma Acute Care Surg. 2012 Feb;72(2):422-7.
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