好酸球性筋膜炎
【概念】
1974年にShulmanが報告した疾患で、皮膚硬化と筋膜炎をきたし、筋膜を主体に好酸球の浸潤を認める。
【疫学】
好発年齢は30~60歳(平均43歳)、男女比2:1とやや男性に多く、国内外において400例程度の報告がある。まれに小児例や高齢発症の報告例もある。
【病因】
原因は不明であるが急激な運動により筋膜が傷害されて抗原が流出する可能性が推定されている。筋膜由来の繊維芽細胞のコラーゲン産生が亢進し、特にⅠ、Ⅲ、Ⅴ型のコラーゲン及びTGF-βのmRNAが増加しておりconnective tissue growth factorの増加が指摘されている。
【臨床症状】
半数以上の例に、発症前に激しい運動の既往がみられる。初発症状は四肢の痛みとこわばり、腫脹、浮腫性硬化で発赤を伴う。全身的には発熱と全身倦怠感を示す。進行例は、皮下組織が収縮して硬化し、皮膚表面が粗く、敷石様に凹凸を示し、orange peel signと呼ばれる粗雑さを呈するが、表皮は傷害されていない。半数以上の例で、肘、手首、足首、膝、肩、手指の屈曲拘縮が認められる。大部分の例で四肢筋膜が侵され、上下肢の罹患頻度はほぼ等しく、一部の例では体幹に及ぶ。顔面と指は侵されず、レイノー現象も認められない。関節痛または関節炎が約40%にみられ、手根管症候群が20%にみられる。
【血液検査】
末梢血中の好酸球増多、赤沈亢進、高γ-グロブリン血症が主な所見である。好酸球増多は約60%、赤沈亢進は29%、高γ-グロブリン血症が35%の患者に認められたと報告されている。抗核抗体やリウマトイド因子の陽性例も10%程度に認められるが、特異抗体の出現は認められない。
【診断】
確定診断は組織生検により行われる。生検は皮膚から筋膜、筋まで一塊で採取する。筋膜肥厚および好酸球中心の炎症細胞浸潤が認められる。筋膜は肉眼的にも肥厚しており、リンパ球、形質細胞、好酸球浸潤を認める。筋膜には免疫グロブリンや補体が沈着し、筋外膜や筋鞘、皮下脂肪組織の繊維化を認めるが、強皮症の場合のような表皮の萎縮、付属器の減少、真皮の膠原繊維化増加を認めない。またMRIの脂肪抑制T2強調画像により筋膜の肥厚を認める。鑑別診断としては、強皮症と、好酸球増多筋痛症候群などの強皮症に類似した疾患が挙げられる。
【合併症】
再生不良性貧血、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、ホジキン病、白血病、関節リウマチ、橋本病、多発性筋炎との合併が報告されている。
【治療】
治療としては、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン1mg/kg/day)の投与が約90%で有効である。ステロイドの早急な減量は再燃をきたすこともあるので、症状が改善するにしたがって徐々に投与量も減らしていく。約2~4年の維持療法(5mg/day程度)後に、治療を必要としなくなる。
【参考文献】
Up To Date :Eosinophilic fasciitis 9 14, 2012. Simon M Helfgott, MDJohn Varga, MD
ハリソン内科学
膠原病学Principles and the cause of Rheumatic Diseases 塩沢俊一
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