感染症診療の原則
青木眞先生 2008年5月21日、大阪での講演より
1200回くらいお話されたとおっしゃる演題の講演。未だに輝きがある基本中の基本。逆に言うと、1200回も青木先生が講演をなさっていてもまだこれがコモンセンスになっていない日本の医療現場(ええ?そうなんですか?というリアクションがあること自体だ問題)。本日、私も院内で研修医に講義をしたが、内容は似たような感じでした。
箴言集
・be specific 原因微生物は何か?固有名詞で考える
・熱、白血球、CRPに踊らされない。
・重症感染症であればこそ熱、白血球、CRPに踊らされない(パラドキシカルに動く)
・精神症状と熱があるからといって頭の感染症とは限らない。
・CRP使用禁止を申し渡した研修医は臨床能力習得が早い。
・surgical illnessはsurgicalに治す(抗菌薬だけでは治らない物も)
・FUOで大事なのは、FUOであると認識すること。FUOとは「なんだかよく分からない」ことではない。フォーカスは探しきること。
・細胞性免疫障害で問題となる(ステロイド、移植、HIV)微生物は暗記すべし
・ウイルス ヘルペス(CMV, VZV, HSV, EBV, HHV6)、その他(アデノ)
・細菌 LLMNS リステリア、レジオネラ、抗酸菌、ノカルジア、サルモネラ
・心筋 カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス、カリニ肺炎、ヒスト、ブラスト、コクシ
・原虫 トキソプラズマ、クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、イソスポラ、糞線虫
・結核PCRは感受性は教えてくれない。胸膜炎ならやはり胸膜生検が大事。
・グラム染色を行って原因微生物に興味を持とう。
・MRSAと緑膿菌が同時に培養に生えたら、何を考えよう?もし喀痰グラム染色でGNRばかりなら、MRSAは却下できる。
・MRSAが喀痰から生えたときに、本当にMRSA肺炎の時のグラム染色像を理解する。
・培養は、菌名と感受性試験を教えてくれる。菌名の臨床的意義と感受性試験の臨床的な読み方を識る。
・黄色ブドウ球菌が血液が生えていて腰が痛かったら、そうでないと分かるまでは骨髄炎(椎体炎)である。
・細菌検査室が院内にあるのは研修病院のいろはの「い」
・入院患者の下痢便の便培養は、移植やHIV患者などの例外を除けば、御法度検体であることが多い。
・サルモネラにセファゾリン、セフォチアム、アミノグリコシドを使ってはいけない(たとえ感受性があっても)
・血液培養を取るときは、熱、白血球上昇、CRP上昇だけではない。低体温、白血球減少、CRP上昇低下も大事になることも。意識障害、心不全、腎不全、アシドーシスなどもきっかけに!
・重症だからといってブロードスペクトラムと決めつける必要はない。
・アミノグリコシドは初回はフルドース。腎機能は関係なし
・ポリミキシンも注意深くモニターすれば副作用はそれほど大きくない。
・CID 2004;38 新しい抗菌薬は減っている。耐性菌は増えている。
・バンコマイシンもMRSAに対してMICが2を超えるとあまり効かなくなっている。
・結核のサードラインの治療はイミペネム、マクロライド、リネゾリドなどは普段使う薬(セカンドラインのキノロンも)。 You use it, you lose it.
・細菌感染はcrescendo and decrescendo (細菌感染症は改善OR悪化あるのみ)動かない患者は感染症でない可能性が高い。
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