シリーズ 外科医のための感染症 23. 心臓血管外科篇 血管の感染症
感染性動脈瘤
感染性心内膜炎(IE)と違い、こちらはほぼ全例、外科的治療を要します。とてもまれな感染症ですが、神戸大病院では紹介患者が多いためにしばしば経験させていただいております。
診断は、画像で動脈瘤が見つかるんだけど、「なんかおかしい」と心臓血管の先生が思われたときがきっかけになることが多いです。で、血液検査をすると白血球とCRPが高い。これは感染では、、というわけです。
ただし、この段階で慌てて抗菌薬を出してはいけません。言わずもがな、のことですが診断には原因菌を捕まえることが必要です。血液培養を複数セットとり、抗菌薬をエンピリックに使いながら手術を待ちます。
原因菌はグラム陽性菌の黄色ブドウ球菌と、グラム陰性菌のサルモネラ(non-typhi)が多いです。なので、エンピリックな治療はバンコマイシンとセフトリアキソンのことが多いです。原因菌が突止められたら、セオリー通りde-escalationをします。
治療期間は全く分からないんですが、だいたい術後6週間くらい。動脈瘤切除、人工血管置換が不可能な場合は長期のサプレッションをかけます。期間は、、、god knowsって感じです。
人工血管感染
これは非常にやっかいな感染症です。整形外科でもやりましたが、人工物には細菌がつきやすく、細菌がつくとバイオフィルムに隠れて抗菌薬では除去できなくなる、というわけです。しかも、人工関節等と異なり、血管の再置換はとても難しいのです。原因菌は黄色ブドウ球菌やCNSのようなグラム陽性球菌が多いです。
血管周囲のデブリドマン、人工血管除去、交換など、徹底的に外科医だのみな感染症です。
あとは、、、
感染症に見えても感染症じゃないこともあります。高齢者の巨細胞動脈炎(giant cell arteritis, 側頭動脈炎とも)、あるいは若年の高安病はどちらも大血管の炎症性疾患で、感染症としばしば間違えられます。
まとめ
・感染性動脈瘤は内科的には治癒困難
・原因菌は突止めよう
・人口血管感染はとても難しい
・炎症があっても感染でないこともある
文献
Young MH et al. Vascular graft infections. Infect Dis Clin N Am. 2012;26:41-56
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