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2011/01/05

コメント

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参考資料のリンクです。

ポリオワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版)国立感染症研究所
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000bx23-att/2r9852000000bybl.pdf

予防接種後副反応報告書集計報告書平成20年度分(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000misk-att/2r9852000000miu1.pdf

数字の母数の意味が違う数字をそのまま比較されていらしゃると思います。

まず、母数が違っています。
1)ワクチン出荷数を母数とした計算
2)接種数を母数とした計算
3)新生児、何名当たりの計算

ご承知の通り、VAPPは一回目が最も危険です。2回目、3回目について確率は低くなりますので、接種数あたりの計算では、接種回数が多くなるにつれて、見かけ上小さくなります。
なお、486万の出典にあたると、母数は1)を使っています。出荷数は接種数よりも約2割多いです。

次に、患者数の数え方が違っています。
1)免疫不全者を入れる、入れない。
2)二次感染者の数を入れる、入れない。
3)保健所への届出人数だけを数える、届出がなくても感染研が確認した人数もいれる?
同じく、486万の出典にあたると、免疫不全、二次感染は数に入れていません。

以上をきちんと整理してから、国立感染症研究所がまとめた、「ポリオワクチンに関するファクトシート」の11ページの患者数をご覧ください。

最後に、国立感染症研究所は、「検体未採取等による検査未実施症例やポリオウイルス分離陰性例は含まれていないため、実際のVAPP発生頻度は上記報告より高い可能性がある。」としています。

「ウイルス学的精査でワクチン株を確認したのは1例」の意味は、ウイルス検査が出来る期間(発症後数週間以内)に、診断された医師が、ポリオの可能性に気がつかないで、ウイルス検査そのものをしていないという意味です。
医師の方々は肝に命じて欲しいと願っています。

岩田先生、丁寧なお返事ありがとうございます。ブログも拝見させていただきました。iPadでの投稿が出来なかったため、お返事遅れてしまいました。

私は以前、保護者にVAPPの確率について説明をする時に440万の数字を用いていました。単純計算で4年に一件くらいです。100万人に2-4人という数字と比べて、保護者の受け止め方がどの様に異なるかはわかりません。

しかし、私自身の問題としてVAPPを見逃していたのでは、という思いがあります。滅多にない事だからポリオの麻痺はないだろう、、、と思っていたかもしれない、そう思うと背筋が寒くなります。

440万の数字のもう一つの問題としては、VAPPは滅多にない事だからという理由で厚生労働省(厚生省)がOPVの移行を認めなかった事にあります。最初から100万人に2-4人という数字でも、厚生労働省は滅多にないというかもしれません。しかし、440万が100万になったら状況は変わるかもしれません。

 今後ともよろしくお願いします。

pippinさん ブログへのコメントありがとうございます。

申し訳ありませんが、いただいたコメントの全てにお答えするだけの能力を持ちません。2点だけ回答させてください。

・「440万人接種に1人の頻度」この数字の根拠はどこにあるのでしょうか?

これはすでにブログに載せた通りです。Plotkinの教科書に引用されている論文です(あいにく英語ですが)。

・440万に1人という数字が、医師や医療関係者を油断させているという事は考えられませんでしょうか?

少なくとも僕は、○分の1だからよい、とか油断できる、とは考えません。ポリオは根絶が目標というのが世界的コンセンサス(日本もそう)で、VAPPが何人出れば許容される、あるいはされない、という議論の立て方そのものがおかしいと思います。

拙著にも、そしてこれまでにもずっと申し上げてきましたが、日本はできるだけはやくIPVに切り替えるべきだと僕も考えています。そしてそう主張してきました。その点において、pippinさんと僕には意見の対立はないと思います。この場ではこれ以上うまく説明できませんが、できましたら拙著をお読みいただき、その意図をご理解ください。

医学知識のない、1人のポリオサバイバーの意見とお聞きください。

「440万人接種に1人の頻度」この数字の根拠はどこにあるのでしょうか?
「いちおう学問的にコンセンサスのとれている数字を紹介させていただきました。」と言われますが、このことがVAPPの正確な数字を得る事をますます困難にさせているのではないかと思っております。

OPVを接種後異変をきたしても、440万に1人という数字が、医師や医療関係者を油断させているという事は考えられませんでしょうか?
現実に親がいくら訴えても認めてもらえず、ウイルス分離の可能な時期を逸がすケースがあります。


お示しいただいた20年度のマヒ例、これを有害事象としていいのでしょうか?
一生背負わなくてはならないマヒを有害事象とされるのは納得できません。IPVならマヒは起きなかったのです。
確かに「ウイルス学的精査でワクチン株を確認したのは1例」でしょうが、陰性とされたものは2ヶ月後の検査であり、他は不明とあります。
不明とは検査されなかったのか、検査しても時期を逸していると判断されたのかではないでしょうか?

暮れに不活化ワクチンを求める署名を提出した三歳のワクチンポリオ関連マヒの男の子二人のことを読まれたでしょうか。
お母さんたちは個人情報が優先され、横の繋がりを取りづらいなか、他に2名の同年代被害者とコンタクトを取っておられます。若干の時期的ずれはあるかもしれませんが、20年前後に確実に4名はOPVでマヒにさせられたお子さんの情報があるのです。
また、6名とされていますが、顔面マヒもポリオの症例ですので7名と思います。


アメリカの頻度ですが、分母は何かという疑問があります。
ツイッターで「『予防接種は安全か』(P.A.オフィット、L.M.ベル)では75万人に1人とされている」というようなものがありましたので、私なりに調べてみました。
英語が苦手ですので、日本語で読める可能な限り正確だと思われるものからの推測ですが…

日経メディカルオンラインー不活化ポリオ・ワクチンの使用で米国におけるVAPP発症が皆無に
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/338573.html

CDCが保管していた調査データと、National Immunization Survey(NIS)のデータから出された数字があります。また論文の原題は「Vaccine Policy Changes and Epidemiology of Poliomyelitis in the United States」、概要はこちらで閲覧できるそうです。

オンラインの記事には「1997~1999年には13人のVAPP患者が発生したが、全員にOPVのみが投与されていた。」とあります。3年間に13人、1年に4人強。当時のアメリカの出生数は400万人弱。全出生数を分母にすると頻度は約90万人に1人となりますが、この13人はOPVのみの接種とすれば、その分母は著しく少なくなるはずです。


たとえ、VAPP頻度が440万人に1人であったとしても、もはやOPVを使うべきではないと思います。
いつ実際に使えるかわからない国産IPVを待つことで、これ以上1人の被害者も出してはならないと思います。

僭越な事を長々と書き連ねてしまいましたが、どうぞ、ポリオサバイバーの切なる想いとお受けください。
そして、一日も早く、IPVに切り替えられますよう、先生のお力をお貸しくださるようお願い申し上げます。


http://twitter.com/pippinpippin

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